こんにちは。秋葉原スキンクリニック 副院長の矢田佳子です。
夏になると増える足のトラブル。かゆみ、臭い、水虫などで、毎年悩まされている方も多いと思います。今回は、夏に増える足のトラブルの代表、足の水虫についてお話させていただきます。
これって水虫? 水虫は誰にでも感染する可能性があります!
水虫の正式名称は白癬(はくせん)と言い、真菌(カビ)の一種である白癬菌による皮膚の感染症です。
なぜ水虫かというと・・・
江戸時代、農家の人が田んぼで作業する時期になると手足に水疱ができていて、当時は原因が分からず、水の中にいる虫に刺されたのだと思い、「水虫」と呼ばれるようになったとか・・・。
白癬菌は、ケラチンを栄養源とする真菌で、ケラチンの豊富な皮膚の角層、爪などを好んで寄生します。カビの一種である白癬菌は高温多湿環境で増えやすく、夏になると汗で蒸れやすい足に感染しやすくなり、水虫として発症します。
私は大丈夫。と思っている方は要注意!白癬菌が好む環境が整えば誰でも感染してしまうリスクがあります。赤ちゃんからお年寄り、男性だけでなく女性もリスクは同様です。
感染するのは足だけではなかった!水虫は体中の皮膚を狙っている!
水虫は足だけに出来るわけではないことをご存知ですか?
実はカラダの様々な部位(頭皮、胸や背中、股、手、顔にまで!)に白癬菌は感染する可能性があります。足の水虫を放置していると、爪にまで感染が進み、治すことが難しい爪の水虫(爪白癬)になってしまうこともあるのです。
足がかゆい=水虫 ではなかった!
足の水虫(足白癬)の症状とは?
「水虫はかゆい。」という印象をお持ちの方も多いと思いますが、実は足白癬はそれ自体あまり痒くないことが多いということをご存知ですか?
痒みがないということで感染に気づきにくく、はっきりとした皮膚の症状が出てしまった時には、すでに白癬菌がか なり増えてしまっていることが多いのです。
痒みが出てから気づいては時すでに遅し。そのようなことにならないように、ぜひ入浴後の足チェックを日課にしてください!
足白癬は症状には様々な状態があります。以下にお示しする症状を参考に、一つでも当てはまるものがある場合は、皮膚科で相談してみてください。
①足の指の間の症状
趾間型(しかんがた)と呼ぶこの症状は水虫の中で最も多く見られます。足の指と指の間にかさかさした皮剥けができたり、皮膚がふやけたように白くなったりします。時に皮膚表面に赤みと痒み、痛みなどを伴うこともあります。痛みを伴う場合は、白癬菌に加え、細菌も感染してしまっていることがあるので要注意です!
②小さい水ぶくれ
小水疱型・汗疱型(しょうすいほうがた・かんぽうがた)と呼ぶこの症状は、つちふまずや足の縁などに小さい水ぶくれがたくさん見られます。この型の水虫と似ている皮膚病に汗疱という汗が角質層の下に点々とたまるものがあり、こちらは感染症ではありません。ただ、見た目で見分けることは非常に難しいため、皮膚の一部を取って(痛みはありません)白癬菌がいないかどうかを顕微鏡で確認する検査をすることをお勧めします。
③足の裏の皮膚が厚く固くなる
角質増殖型(かくしつぞうしょくがた)と呼ばれるこの症状は、足の裏全面〜足の縁にかけて広範囲に赤みと角化(角質が厚くなる症状)を認めます。とても治りにくい症状で、残念ながら自然に治癒することは期待しにくいです。
④爪が白く厚くもろくなっている
爪白癬(つめはくせん)と呼ばれ、足の皮膚からだんだんと爪に白癬菌が侵入し、爪の中で菌が増えてしまった状態です。
爪の厚みが増し、白く濁った色になってボロボロとした状態になります。足の爪にペティキュアをしている方は、知らず知らずのうちに爪白癬になっている。なんてこともありますので、たまに爪の状態を確認することをお勧めします。
素敵女子に急増中!? 水虫の脅威!
水虫はおじさんの病気、なんていうのは昔の話。最近は女子の水虫も増えていて、男女比は1:1ともいわれていて、5人に1人が白癬にかかっているという報告もあります。
女性の活動範囲が増えるにつれ、白癬菌に感染する機会も増えていきます。公共の場所にあるスリッパやサンダル、スポーツジムや温泉などのバスマットは、ほとんどのものに白癬菌が付着している可能性があることをぜひ覚えておいてください。
女性がよく着用するスットキング、雨の日の長靴、冬場のブーツなどにより足は高温多湿になりやすく、さらに菌が増えてしまうリスクが上がるため要注意です。
水虫撃退法はこれ!
白癬菌の感染予防は・・・何はともあれ足を清潔にすること!(当たり前ですが・・・)そして、高温多湿を避けることも重要です。
清潔を保つためには、毎日石鹸で足指の間を洗うのみで十分です。重要なのは洗った後。水気をよく拭いて指の間をしっかりと乾かしてください。ナイロンタオルなどでごしごし洗うと、皮膚に小さな傷ができてしまい、水虫が侵入しやすくなってしまうため注意してください。
要注意なのが温泉、スポーツジムなどの入浴後です。入浴でカラダがきれいになったと思ったら、お風呂から上がるときのバスマットで白癬菌がペタリ・・・。そのまま白癬菌が足の裏でどんどん増えていきます。このような時の予防方法は、靴下や靴を履く前に足をもう一度拭いたり、帰宅後に足だけでも再度シャワーで流すことです。
まあいいか・・・。というその1日だけで水虫になってしまうことがありますので注意です!
他には、指の間が蒸れない5本指靴下も予防効果が期待できます。素材は綿か絹がお勧めです。
また、一日履いた靴は翌日に向けてしっかり乾かしましょう。可能なら毎日同じ靴を履かず、2-3日ごとローテーションして履くとなお良いと思います。
家族に水虫の人がいる場合、足拭きマットを共有しないこと。水虫の人は裸足で家を歩きまわらないこと。そして、家族全員が、毎日の水虫予防ケアを徹底することが大切です。
水虫になっちゃった(T_T)でも心配しないで!
水虫の治療方法について。
「不幸にも水虫になってしまった・・・」という方。でも大丈夫!水虫はきちんと治療すればよくなります。
ただ、自己判断は禁物です。水虫とよく似た別の病気もあり、足白癬と確定診断するためには、顕微鏡検査で白癬菌を確認する必要があります。水虫の疑いがあるときは、まずは皮膚科を受診しましょう。
趾間型や小水疱型足白癬では、抗真菌剤外用を行います。細菌感染やカブレを合併している場合もあるため、その時は抗生剤、ステロイド外用剤などを短期間併用することもあります。
角質増殖型足白癬は、塗り薬だけでは治りにくいので、抗真菌剤の内服が必要になることもあります。
また、足白癬には爪白癬を合併することもあるため、足の皮膚だけでなく、足爪の状態も診てもらうことが大切です。ペディキュアをしている人は、ネイルをオフしたときに爪の状態をチェックするようにしてください。
皮膚科で処方される抗真菌剤の多くは1日1回の外用で効果が出るものも多く、塗るタイミングは入浴後がオススメ。塗る範囲は症状のない部分も含めて広めに塗ることがPOINTです。右足にしか症状がない場合でも、左足にも薬を塗ってくださいね。
治った!と思っても要注意!
症状がなくなっても白癬菌はまだいることが!
実は水虫の症状が見えなくなっても、まだ白癬菌が皮膚に残っていることがあるのです。
角質層に寄生している白癬菌を退治するためには、最低でも皮膚がターンオーバーする期間(約45日)は、外用を続けることが必要となります。再発を予防するためにはさらに1ヶ月ほどは外用をした方がよいので、3ヶ月ほどを目安に外用を続けることが完治につながります。
爪白癬は、確実に治すには抗真菌剤の内服がファーストチョイスです。しかし、約半年もの長い期間に及ぶ内服をしなくてはならないことも多く、肝臓代謝の薬剤であるため、肝機能の悪い方(γGTP、AST,ALTという血液検査の値が高い方)や飲み合わせの悪い薬を常用されている方は内服できない場合もあります。
そのような方に吉報があります。最近では、爪への浸透率が高く、長期に患部に留まるように調整された、新しいタイプの外用剤も出てきており、諸事情により内服が出来なかったり、内服治療に抵抗があるといった方も、完治を目指せるようになりました。ただ、足の爪が生え変わるには1年ほどかかるため、根気強い治療が必要になることを覚えておいてください。
まとめ
足の水虫は、まず予防すること。そして疑われる症状があった場合は、早めに皮膚科を受診し、適切な治療をすることが大切です。長い間放置して、爪にも症状が広がってしまったら、治療にさらに長い時間を要することになってしまいます。今年こそは水虫とサヨナラして、快適な夏を過ごしましょう!