こんにちは。秋葉原スキンクリニック 副院長の矢田佳子です。
「じんましん」の原因と種類などについて前回お話をさせていただきました。
今回はその「じんましん」の原因をさぐるための様々な検査や治療方法についてお話をさせていただきます。
「じんましん」の検査は多種多様
じんましんの中でも、原因のはっきりしたものは、それを避けることが治療になるため、原因を突き止めるための検査が必要になります。
①血液検査
代表的な検査は血液検査です。肝機能が悪いとじんましんが治りにくいこともあるため肝機能をチェックしたり、体の中に慢性の炎症があるとCRPという項目や白血球が上昇するため発見に役立ちます。また、アレルギー性のものを疑う場合、IgE値をチェックすることもあります。
それ以外にも下記に示すような特殊な検査があります。
②皮膚テスト
皮膚テストには皮内テスト・プリックテスト・スクラッチテストがあります。
皮内テストはアレルゲン(アレルギーの原因物質)エキスを皮内に注射し15分後の反応をみるものです。
プリックテストは細い針を軽く刺し、そこにアレルゲンエキスを1滴たらして15分後の反応をみるものです。
スクラッチテストは細い針でかるく皮膚をひっかき、プリックテストと同様、アレルゲンエキスを垂らし反応をみます。
ただしこの方法で陽性であっても、それらがすべて蕁麻疹の原因とは限らないので、最終的には症状やそれまでの経過などを併せて判断します。
③誘発テスト
温熱・寒冷じんましん、圧迫じんましんは、原因と思われる刺激を皮膚に与えてじんましんができるかを調べます。
日光じんましんは可視光線を出すランプを背中にあてて発疹が出現するかどうかを調べます。
コリン性じんましんの場合は、アセチルコリンという物質を皮内に注射することで人工的に汗をかかせて症状が出てくるか調べます。
④負荷テスト
原因としてかなり疑わしいのですが、皮膚テストを行っても結論が出ない場合、行うのが負荷テストです。薬剤性のじんましんの原因チェックとしても行われることがあります。
負荷テストは原因と思われる食べ物や薬剤を摂取してじんましんの反応が出るかどうかをみます。原因となるものを摂取する場合、少量でも強い反応が出ることもあり、さらに万が一ショック症状が出ても対応できるよう、入院をして検査をすることが普通です。自己流で行うことは絶対避けてください。
※上記検査は、医療機関によってはできないものもあります。
「じんましん」の治療法は?
①原因・悪化要因をとにかく避ける
原因や悪化要因がはっきりしていれば、まず第一にそれらを取り除く、または避けるようにすることが治療になります。ただ、原因が不明なじんましんも多いため、症状が出続ける場合は内服薬による治療が必要になります。
②抗ヒスタミン薬(H1ブロッカー)
じんましんには様々な種類がありますが、ほとんどの場合、ヒスタミンという物質が原因となるため、この作用を抑える効果のある抗ヒスタミン剤(H1ブロッカー)を使用することで症状を抑えることができます。これらの薬は主に内服薬として用いられますが、症状が強い場合は注射をすることもあります。
抗ヒスタミン薬には1日2回内服するものや1回で良いもの、眠気が強いもの、少ないものなど多種の薬剤があります。これらの薬剤は効果の程度に個人差がありますので、担当医師と相談しならが自分にあう薬を探していくことも重要です。また、症状が治まっても、すぐに内服をやめると再発する場合があるため、自己判断で内服を中断しないようにしてください。
③その他の薬剤
抗ヒスタミン薬(H1ブロッカー)の他に、H2ブロッカー、トラネキサム酸、抗不安薬、漢方薬などの薬が、補助的に用いられることもあります。
④ステロイド治療
急激に呼吸がくるしくなるような重症じんましんの場合や②③の治療をしても症状が強い場合はステロイドを用いた治療を行うこともあります。
⑤外用剤
外用薬は多少痒みを軽減するくらいの効果しかないため、通常は使用しませんが、掻き壊しているときなどは併用することもあります。
「じんましん」は放置せず早めの治療が肝心です。
じんましん治療のポイントは治療開始時期。症状が出てすぐに治療を開始した人と、何ヶ月も放置した人では、早めに治療を始めた人の方が治りが早いのです。
じんましんは発症してからの時間により
- 急性じんましん:発症して1ヶ月以内のもの。
- 慢性じんましん:発症して1ヶ月以上たったもの。
この2つに大きく分けられていて、慢性じんましんの方のほうが急性じんましんの方より治りにくい傾向があります。
しかし、発症して1ヶ月経ってしまい、慢性じんましんと言われたから、もう一生治らないかもしれない・・・。と諦めるのは早すぎます。発症1年以内の方の60%程度が半年程度の通院でほぼ改善し、その後、1年間の通院で治癒する。との報告もありますから、「この発疹、じんましんかも。」と思う方は、遅くとも発症して1年以内に病院で治療を開始しましょう。
「じんましん」が出ている時に避けるべき食品や薬は?
食品添加物やサリチル酸を多く含む食品、仮性アレルゲンとなるような食品、非ステロイド系消炎鎮痛剤は悪化要因になりますので、症状が強く出ているときは、それらの摂取はできるだけ控えた方がよいでしょう。
食事内容は偏りのないよう色々なものを食べるようにし、肉や魚は新鮮なものを選び、火を通して食べるなど工夫してください。また、疲労やストレスを避け、規則正しい生活を心がけるなど、日常生活にも気をつけてください。
まとめ
- 症状が出たときの状況を思い出し、原因となるものがないか探ってみましょう。
- じんましんの原因は食べ物だけではなく、様々な原因があります。
- 原因がわからないじんましんも多いですが、原因にかかわらず抗ヒスタミン薬の治療を早めに開始することが重要です。
- 放置しておくとじんましんが治りにくくなってしまいますので早め早めの治療を心がけましょう。
- 悪化要因となる食品や薬剤に注意し、疲労やストレスを避け、規則正しい生活を心がけるなど、日常生活にも気をつけてください。
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