小児の水疱瘡(みずぼうそう)用ワクチンである乾燥弱毒生水痘ワクチンが2016年より50歳以上の年齢の方に限って帯状疱疹予防ワクチンとして使用できることになりました。
50歳を過ぎると帯状疱疹の発症率が急激に高くるということをご存知でしょうか。
日本では80歳までに約3人に1人が帯状疱疹になり、またそのうち2割の方は 痛くてつらい「帯状疱疹後神経痛(PHN)」が残るとされています。
今日は帯状疱疹と、その予防ワクチンのことについてご説明します。
帯状疱疹とは?
ほとんどの人が帯状疱疹ウイルスを持っています
帯状疱疹は水痘・帯状疱疹ウィルスが原因の皮膚の病気です。
実はみずぼうそう(水痘)のウィルスと帯状疱疹のウィルスはまったく同じであることはご存知ですか?
日本人成人の9割以上が、このウィルスを体内に持っている状態だと言われています。そのためにほとんどの人が帯状疱疹になる可能性があると言えるのです。
みずぼうそう(水痘)のウィルスが体の中に入ると、そのウィルスは消えることなく、神経の一部である後根神経節というところに住み着きます。後根神経節がいわばウィルスのお家というわけです。
ちょっとしたきっかけでウイルスが暴れてしまうのが帯状疱疹
この神経節に潜むウィルスは、体の免疫力(体を守る兵隊のようなイメージ)がしっかりとしている時はおとなしくしているのですが、体力低下や老化、抗癌治療、免疫が落ちる病気などにかかり、体を守る兵隊が減ると、ここぞとばかりに数を増やし暴れだします。
神経節の中でだけ暴れているのであれば被害は最小限ですが、ウィルスがどんどん増殖し、神経節から溢れ出すと、神経を辿りながら皮膚の表面までやってきてしまいます。この時皮膚に見られるのが沢山の水ぶくれ。神経を辿ってウィルスが悪さをするため、発疹も神経に沿って帯状に出てきます。これが帯状疱疹で、帯状に出てくる水ぶくれ。という意味の病名です。
日常生活に支障が出るほどのつらい痛み・発疹が3〜4週間続きます
帯状疱疹の発疹は、体の左右どちらかに出る事が多いのですが、稀に両側に出る方もいます。非常に強い痛みを伴うこともあり、またその皮膚症状は3〜4週間ほど続きます。
発疹は、腕や胸、背中に出ることが多いのですが、顔や首、足、臀部などに現れることもあり、全身のどこにでも発症する可能性があります。
症状が強いと、痛みがひどくて体を動かすことができなかったり、睡眠が思うようにとれず、日常生活に支障をきたすこともあります。
帯状疱疹の発症率は50歳以上になると急激に高まります
帯状疱疹患者の約7割が50歳以上です
帯状疱疹の発症率は50歳以上になるとそれまでの倍近くに高まります。また、患者の約7割が50歳以上であるというデータも出ています。
対象・方法:1977〜2011年に宮崎県の46施設で帯状疱疹と診断された75,789例について年代別に帯状疱疹の患者数及び発症率を算出
80歳までに3人に1人が帯状疱疹にかかる
日本においては、80歳までに約3人に1人が帯状疱疹にかかると言われています。帯状疱疹は加齢、疲労、ストレスなど誰にでも見られるごく日常的なことで免疫力が低下した時に発症しやすくなります。
帯状疱疹発症後のリスクについて
約2割の方が帯状疱疹後神経痛に悩まされます
帯状疱疹による発疹が治った後にも、帯状疱疹後神経痛(PHN)という痛みが残ってしまう可能性があります。50歳以上では約2割にも当たる患者さんがこのような状態へ移行すると言われており、個人差もありますが何ヶ月、時には何年もの間辛い痛みが残ってしまうことがあります。
まれに合併症による障害・後遺症のリスクもあります
帯状疱疹によって引き起こされる合併症には様々なものがあるのですが、例えば、顔に症状が出た際は、発疹が目立つため人に会うことができない、外出ができないという問題ばかりか、顔面神経麻痺や難聴、めまいなどの重篤な合併症(ラムゼイハント症候群)を起こしたり、角膜炎などによる視力低下や失明といった危険性もあり非常に注意が必要です。
帯状疱疹はそれ自体の症状・痛みもさることながら、症状がおさまった後の後遺症リスクもあるため、ワクチンで予防して発症しないようにすることが大事です。
帯状疱疹って人にうつるの?
帯状疱疹としてはうつらない
帯状疱疹として家族や同僚など周囲の人にうつることはありません。しかし、まだ水ぼうそうにかかったことがない人、すなわち水痘・帯状疱疹ウイルスに対する免疫を保有していない人には感染する可能性があります。
まだ水ぼうそうにかかったことのない赤ちゃんや子どもとの接触は避けて
子どもの頃に水ぼうそうにかかったことのある大人への感染リスクは少ないと言えますが、まだ水ぼうそうにかかったことがない乳児や幼児と接することは避けたほうがいいでしょう。
万が一このような乳児・幼児と接して帯状疱疹ウイルスが感染すると、その子どもが水ぼうそうを発症してしまいます。
帯状疱疹予防ワクチンってどんなもの?
子どもの水ぼうそう予防ワクチンと同じものです
2014年以降、水痘ワクチン(水ぼうそう予防ワクチン)は「定期接種化」され3歳未満のお子さんは無料にて予防ワクチンを接種できることとなりました。
今回、50歳以上を対象に接種できることとなった帯状疱疹予防ワクチンも全く同じワクチンを使います。
ただし、50歳以上の方は公費負担制度が無いため、全額が自費扱いとなります。費用は10,000円前後のことが多いようですが、病院によって価格設定が異なるため、各病院にお問い合わせください。
ワクチンの効果は一生続かない
残念ながら、帯状疱疹予防ワクチンを接種しても、その後一生涯効果が持続するわけではありません。
ワクチンで獲得したウィルスに対する免疫力は約5年程度で徐々に低下してきてしまいますので、定期的に2回目、3回目を接種することが推奨されます。
帯状疱疹予防ワクチンを接種できない人もいます
例えば発熱している人は熱が引いて体調が良くなってから接種する必要があります。具体的には37.5度以上の体温があると予防接種を受けられません。
そのほかに接種を受けられないケースは次の通りです。
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- 重い疾患を患っている
- 帯状疱疹予防ワクチンの成分によってアナフィキラシーを起こした経験がある
- 先天性及び後天性免疫不全状態の方
- 副腎皮質ステロイド剤や免疫抑制剤などの治療を受けており、明らかに免疫抑制状態の方
- 妊娠中の方
- そのほか医師に予防接種を受けない方が良いと言われた方
このような項目に当てはまる方はもちろんのこと、定期的に服用している薬がある、現在何らかの病気にかかっているという方は、かかりつけの医師に一度相談をするのが良いでしょう。
まとめ
帯状疱疹は、痛みや見た目の苦痛を伴う辛いものであるだけでなく、2割もの方が帯状疱疹後神経痛という慢性的な痛みへと移行してしまう、とても怖い病気です。
接種によりその発症リスクを抑えられる帯状疱疹予防ワクチンは、秋葉原スキンクリニックにて 10,000円(消費税別)で受けることができます。
ご希望の方はお電話で事前にご予約の上、ご来院ください。
お電話の場合は03-3256-1212