こんにちは。秋葉原スキンクリニック 副院長の矢田佳子です。ゆく秋の寂しさが身に染みる季節になりました。日毎に寒くなり、空気も乾燥してきています。
これからの季節は一年で最も肌が乾燥しやすい季節!今回はこの時期特に重要になる肌の保湿についてお話ししたいと思います。
肌は角質層に守られている
皮膚を断面でみると、表皮、真皮、皮下組織に分けられ、表皮の最外層に角質層があります。
角質層はラップフィルムのように皮膚の表面を覆い、外的な刺激から肌を守っています。また、角質層には肌の水分を保つ役割もあり、角質層の水分が適切な状態が、「うるおいのある健康的な肌」といえます。
http://www.maruho.co.jp/kanja/atopic/medication/
乾燥がすすむと湿疹ができることも…
みなさんは冬に近づくにつれ、ヒザ下がガサガサして時にかゆみを感じるようなことってありませんか?
肌の水分量が保たれていると、角質層がバリアになって、外的刺激から肌を守ることができます。
逆に角質層の水分量が不足した状態が乾燥肌(ドライスキン)であり、冬の乾燥した気候や冷暖房による湿度の低下、外気温の低下による汗の減少、加齢、肌の洗いすぎなど、さまざまな要因によって起こります。
乾燥肌になると、角質層のバリア機能が失われ、外的刺激を受けやすくなります。
外的刺激は皮膚炎の引き金になり、かゆみを引き起こすこともあります。かゆみがあると掻いてしまいますので、さらにバリアが壊され、湿疹などの皮膚疾患を併発しやすくなる負のループに陥る可能性もあるのです。
スキンケアや生活環境を見直して、乾燥肌対策を!
乾燥肌から湿疹になってしまった場合は、ステロイド外用剤などの治療が必要になりますので、そうならないためにも、日頃から生活習慣やスキンケアに注意して、乾燥肌への対策をすることが大切です。
特にこれからの季節は、湿度や発汗量の低下によって乾燥肌になりやすい季節です。
冬にむけて今からスキンケアを今すぐはじめてください。
乾燥肌のスキンケアの基本はとにかく「保湿」です。
保湿をしっかりと毎日のスキンケアとして行うと、角質層に水分を与えバリア機能を回復させることができます。
冬にむけて取り入れたいこと
乾燥肌のスキンケアの基本は保湿ですが、保湿剤を外用すること以外にも、日常生活において乾燥を悪化させる要因を取り除くことも大切です。
- 暖房のかけすぎに注意し、加湿器などを利用して室内の湿度を50-60%くらいに保つ。
- 入浴時はシャワーですませず湯船につかる(37-40℃くらいの熱すぎないお湯で)。
保湿効果のある入浴剤を使用するのもお勧めです(かゆみのあるときは刺激に注意)。 - 体を洗う時は、洗いすぎに注意。
ナイロンタオルなどでこするとバリア機能が障害されてしまいます。柔らかい素材のもので優しく洗うか、石鹸を泡立てて泡でぬぐうように洗ってください。 - 栄養バランスのよい食事も肌の健康をサポートします。
保湿剤の外用量や回数は?いつ塗るのがよいの?お風呂の後に焦って塗らなくて良いってホント?
保湿剤の使用量
実は保湿剤の使用量にははっきりした規定はありません。
ただ、使用量が少ないと効果が出ないこともあるため、十分な量を外用することが必要です。
保湿剤0.5g程度で手2枚分くらいに塗れる量なのですが、使ってみるといつもよりかなり多く塗っている印象になると思います。いかに普段の保湿剤の使用量が足りないかを実感してみてください。ぬるぬると残る感じが無くなるまでしっかり皮膚になじませましょう。
0.5gは人差し指の先端から第一関節までの量と言われていますが、厳密には、容器の口の大きさで量が多少変わってくるので、「足りないな」と思ったら、適宜追加する必要があります。また、ローション剤では1円玉くらいの大きさで約0.5gの量になります。
保湿剤を塗る回数
ヘパリン類似物質含有の保湿剤を用いて、1日1回と2回で 保湿効果を検討した文献があります1)。
1日1回、外用量0.5mg/cm²、2mg/cm² 、3mg/cm²で14日間塗布した場合と、1日2回、外用量2mg/cm²で14日間塗布した場合で、角質層の水分量 を調べた結果、1日1回より 1日2回塗布のほうが水分量は高くなりました。
ですので、面倒臭がらず保湿剤は1日2回塗りましょう!
保湿剤を1日2回塗布することで1週間ほど効果が継続すると言われています。
皮膚の乾燥を感じたら、まずは1日2回で1週間頑張ってみてください。角質層の水分量が高まり、バリア機能が回復するはずです。
保湿剤を塗る時間帯
保湿剤は入浴後に外用することが多いと思います。
保湿を習慣化するためには、入浴後など時間を決めて外用することは良いことだと思います。ただ、入浴直後の肌が濡れているうちに保湿剤を急いで塗るべし!!というまことしやかな噂が世の中にありますが、それはホントなのでしょうか?
実は、入浴1分後と入浴60分後で保湿効果を検討した実験では、はっきりとした差は認められなかった。という結果が出ています。もし入浴後に塗り忘れた場合は、いつ外用しても効果に差はないので、焦らず保湿剤を塗ってください。とにかく塗ることが大切です!
保湿剤の種類
保湿剤は、白色ワセリンなど、皮膚に油分を補うような保湿剤よりも、尿素やヘパリン類似物質などの保湿因子が含まれているものの方が、角質の水分量を上げる効果が高いとされています2)。
今は尿素やヘパリン類似物質、セラミドなどが含まれている保湿剤が市販されていますので、使用感なども考慮し自分にあったものを選択すると良いとおもいます。
ただし、保湿剤には添加物も入っていますので、かぶれる可能性もゼロではありません。
湿疹になりかけているときなどは、刺激の少ない白色ワセリンの方がよい場合もあります。最近では、白色ワセリンを精製して、より伸びがよくべたつかない商品も出てきていますので賢く利用しましょう。
まとめ
保湿の基本は角質層の水分量を保ちバリア機能を維持することです。
これからの季節は、とくにスキンケアが大切になります。
保湿剤は、入浴後にこだわらなくてもよいので、継続することが大切です。
乾燥を感じたら、まずは1週間1日2回で保湿剤をしっかり外用してみてください。
そして、加湿器などを利用して湿度を適切に保つ、擦りすぎ・洗いすぎに注意する、栄養バランスのよい食事を心がけるなど、生活習慣にも注意してみてくださいね。
冬の乾燥に負けない、うるおいのある肌を目指しましょう!
参考文献
1)大谷真里子ほか:保湿剤の効果に及ぼす塗布量および塗布回数の検討.日 皮会誌122(1):39-43,2012
2)野澤 茜ほか:保湿剤の効果に及ぼす入浴と塗布時期の関係.日皮会誌 121(7):1421-1426,2011